まずは公開、後にレビュー:メルク社がウェブサイトのローカライゼーションを再構築した方法

メルク社は、科学プラットフォームのグローバル展開においてスピードと品質の両立という課題に直面していました。DeepL APIの導入により、同社はまさにその解決策を手にしたのです。

主なポイント

  • メルク社の「SYNTHIA®」ウェブサイトは、単一言語対応から13言語展開へと進化し、グローバルな利用者層を拡大。

  • DeepL APIを統合することで、何ヶ月もかかっていたローカライゼーションのプロセスを1日未満にまで短縮しました。

  • 品質とスピードは二者択一ではありません。メルク社が実践する「まずは公開、後にレビュー」というワークフローは、DeepLへの揺るぎない信頼の証です。

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業界
独立ソフトウェアベンダー・IT, 製薬・ライフサイエンス
DeepLのプロダクト
DeepL API, Glossary, DeepL Translator
主な市場
ドイツ, 日本, 中国, ブラジル, フランス, インドネシア
主な言語
中国語, フランス語, ドイツ語, イタリア語, 日本語, 韓国語, ポーランド語, ポルトガル語, ポルトガル語(ブラジル), スペイン語, タイ語

「逆合成」はブラジルポルトガル語で何と言うでしょうか?

翻訳しやすいコン翻訳が容易なコンテンツがある一方で、化学用語や科学的概念、専門性の高い研究分野は、決して単純ではありません。ドイツ・ダルムシュタットに本社を置くメルク株式会社のSYNTHIA®逆合成ソフトウェアは、ある明確な課題に直面していました。それは、350年以上の歴史に裏打ちされた科学的信頼性を揺るがすことなく、高度な技術情報を迅速かつ多言語で展開することでした。

今回、メルク社シニアマーケティングマネージャーであるマーティン・ザイデンシュテッカー氏に加え、このプロジェクトを実現に導いたパートナーdatagraphis社チームのデジタルクリエイティブディレクターであるデニス・コドレア氏、ソフトウェア開発者のミシェル・シュタインガッス氏に話を伺いました。

両社がタッグを組んだことで、何ヶ月もかかっていたローカライゼーション(エージェンシーへの指示、JIRAチケットの発行、手作業でのインポート、終わりのないレビューの繰り返しといった作業)は、今や1日未満で完了するプロセスへと生まれ変わりました。 

SYNTHIA®逆合成ソフトウェアについて

SynthiaeOnline.comは、逆合成(複雑な分子を構築するための最も効率的なルートを導き出す科学)に特化したプラットフォームとして、創薬、製薬、学術研究に携わる化学者にとっての信頼できるリソースとなっています。

英語サイトとして公開されてからわずか2年。現在では50ページから1930ページへと規模を拡大し、13言語に対応するグローバルなプラットフォームへと進化を遂げました。3660%にも及ぶ驚異的な成長とともに、サイト内には研究論文やウェビナー、ホワイトペーパー、アプリケーションノートといった貴重な知見が豊富に蓄積されています。

では、具体的にどのような課題に直面していたのでしょうか。

SYNTHIA®にとってウェブサイトはすべてのマーケティング活動の中心に位置するものです。あらゆるキャンペーン、展示会、セールスツールが、最終的にはこのウェブサイトへとつながっています。しかし、すべてが英語で構成された画一的なアプローチでは、世界中のユーザーへ十分にリーチすることができていませんでした。

メルク社のチームは、日本、中国、韓国をはじめとする各地の研究者たちがそれぞれの母国語でコンテンツを積極的に検索していることを把握していました。需要はすでにそこにあり、ウェブサイトがローカライズされていないことは、メルク社にとって大きな機会損失となっていました。

サイトの翻訳という解決策は明白でしたが、当時利用可能な手法には拡張性がありませんでした。 

何より、手作業での翻訳は現実的に不可能だったのです。膨大なボリュームと短納期というだけでも難題でしたが、ターゲット層が博士号レベルの科学者であることを踏まえると要求される水準は極めて高く、従来のアプローチでは実現可能なものではありませんでした。ザイデンシュテッカー氏は当時をこう回顧します。

「以前は、ウェブサイトを翻訳するたびにJIRAチケットを発行して管理する必要があり、一つのプロジェクトを完遂するのに数ヶ月もの月日を費やしていました」

さらに、当時試した汎用AIツールも力不足でした。高度な専門性を要する科学コンテンツの翻訳において専門用語の意味が正確に伝わらないどころか、時には笑いを誘うような誤訳さえ発生したのです。結果として翻訳の修正に費やす時間が長大になり、手作業で翻訳するのと時間的に何ら変わらないという結末を招いていました。ザイデンシュテッカー氏は、当時の苦悩をこう振り返ります。

「それまで使っていたツールでは、特にこうした専門用語の翻訳において、意味がまったく通じないものになっていました。そんなコンテンツを公開してしまえば、企業の評判を損なうことになっていたでしょう」

メルク社シニアマーケティングマネージャー、マーティン・ザイデンシュテッカー氏

datagraphis社の役割

「成功とは、ウェブサイトが世界中のユーザーにとって使いやすいものになっていること。そして、多言語での管理が容易であり、将来的な拡張性も備えていることです」 

datagraphis社デジタルクリエイティブディレクター、デニス・コドレア氏

同チームは、SYNTHIA®のウェブサイトを多言語展開に非常に適したコンテンツ管理システム(CMS)である「TYPO3」上に構築しました。

要となる翻訳エンジンにはDeepL APIを連携させ、外部の翻訳ツールへ毎回テキストをコピー・貼り付けする必要はなく、コンテンツが管理されている同じ画面上で直接翻訳が行えるようになりました。

実際の運用において、メルク社の編集担当者はTYPO3の環境から離れる必要が一切ありません。既存のコンテンツ管理画面の横に新しいボタンが配置されており、翻訳したい箇所を選択してクリックするだけで作業は完了します。シュタインガッス氏は、導入の容易さについてこう述べています

「設定は極めてスムーズで、直感的に操作できるものでした。用語集を紐付け、ボタン一つを配置する。ボタンを押せば、すべてが完結する仕組みです」 

「翻訳不可能」を「翻訳可能」へ 

今回のプロジェクトを飛躍的なスピードと効率で成功に導いた核心的要素が、まさに用語集の活用でした。SYNTHIA®には、文脈なしでは正確な翻訳が極めて難しい複雑な専門用語が数多く含まれています。そのため、DeepL用語集の活用は、本プロジェクトにおいて必要不可欠なプロセスとなりました。

datagraphis社が各言語につき約100〜120の用語を網羅した用語集を作成したことで、翻訳におけるスタイルや専門用語の表記は、言語やページを問わず常に一貫性が保たれるようになりました。この一貫性により翻訳後の修正プロセスが飛躍的に効率化し、AIによる翻訳結果を信頼して運用できるという確信をチームにもたらしました。

こうして用語集の整備とシステム連携が完遂し、SYNTHIA®のウェブサイトはグローバル展開を加速させるための強固な基盤を手に入れたのです。DeepL APIについて、コドレア氏は次のように評しています。

「非の打ち所がない完璧なツールで、これを使って作業をするのは本当に素晴らしい体験です」

その後の展開

メルク社とdatagraphis社のプロジェクト環境は一変しました。ボタン一つでページ全体を即座に翻訳できるようになったことで、業務の進め方、アプローチ可能な市場の広がり、そしてビジネス上の成果のすべてが劇的に進化したのです。それでは、具体的な変革の全容を見ていきましょう。

AIファースト、ヒューマン・イン・ザ・ループ翻訳

「私たちはまずコンテンツを公開し、その上で世界中の関係者『新しい言語でウェブサイトが公開されました。ぜひご覧ください』と伝えます」

メルク社シニアマーケティングマネージャー、マーティン・ザイデンシュテッカー氏

同氏にとっての価値は単なるスピードではなく、コンテンツを確信を持って送り出せることでした。DeepLの翻訳精度のおかげで、公開前にすべての訳文を読み込み、修正するという作業は不要となりました。ワークフローは完全に刷新されたのです。ザイデンシュテッカー氏が目指したのは「そのまま公開できるほどに翻訳を信頼する」ことでした。

まず翻訳して公開し、その後で各言語の専門家が仕上げの調整を行うというスタイルです。ザイデンシュテッカー氏は当初から各言語版に専任のネイティブ担当者を配し、現地市場が自らコンテンツのオーナーシップを持つ体制を重視していました。専門家が現在もプロセスにおいて不可欠な存在であることに変わりはなく、本来の強みであるコンテンツの品質向上に注力できるようになっています。

1日以内でローカライゼーションが完了

「新しい言語展開において、DeepL APIが迅速なワークフローを約束してくれると確信していました」

datagraphis社ソフトウェア開発者、ミシェル・シュタインガッス氏

その導入効果はdatagraphis社の業務プロセスを一変させました。現在までに同チームが翻訳した総文字数は100万文字を超え、新規言語の追加に要する時間は1日未満に短縮されています。依然として人の目による確認はプロセスに組み込まれていますが、かつては言語サービスプロバイダー(LSP)とのやり取りや費用交渉、数週間にも及ぶ納期待ち、そしてCMSへの手動入稿に費やしていた手間はすべて過去のものとなり、今ではすべての工程がわずか数時間で完結します。デニス氏は、導入前の状況をこう振り返ります

「以前は組織的な手続きが大きな負担でした。見積もり依頼からコスト交渉まで、一連のやり取りだけで1週間は費やしていたのです」

今やそうした間接コストはすべて過去のものとなりました。

あらゆる言語で確かな成果

「SEOの観点からも大きな効果が出ています。世界中のユーザーが検索を行い、実際に当社のウェブサイトへ辿り着いているのです

メルク社シニアマーケティングマネージャー、マーティン・ザイデンシュテッカー氏

成果は数字が物語っています。SYNTHIA®のウェブサイトは現在13言語で1930ページにわたり展開されており、そのSEO効果は甚大です。 

世界中の科学者がそれぞれの母国語で検索して本プラットフォームに辿り着いており、データがそれを裏付けています。その事実はデータにも如実に表れており、アクセス数上位10ページのうち、7ページがローカライズ版で占められています。各言語のキャンペーンにおいても、検索からコンバージョンに至るまでの全行程を、一貫して同一言語で提供できる環境が整ったのです。ザイデンシュテッカー氏はこう強調します。「カスタマージャーニー全体を現地の言語で体験できるようにすること。それこそが、すべてを可能にしているのです」

さらなる追い風

そして、予期せぬ成功が訪れました。それはブラジル市場です。ザイデンシュテッカー氏は、これほどブラジル向けポルトガル語版への需要があるとは予想していなかったといいますが、数字は予測を大きく上回っていました。

「正直なところ、最初はポルトガル語版が2つも必要なのか疑問に思っていました」

しかし、ブラジル向けに最適化したページを公開した結果、同国からのウェブサイト訪問数は600%もの急増を見せたのです。 「ブラジル市場の勢いは突出しています。現地のニーズに応えるためには、専用の言語版が不可欠だったのです」

この事例は、ローカリゼーションが単に予測可能な市場に貢献するだけでなく、存在すら知らなかった新たな可能性への扉を開いてくれるという、有益な教訓となります。


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