住友商事、DeepLを活用してグローバルな意思決定を加速

世界各地に拠点を展開する住友商事株式会社は、中期経営計画に掲げる「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」という方針のもと、DeepLを全社導入しました。

翻訳精度のばらつきや外部委託に伴うコスト、数日単位のタイムラグといった課題を解消し、翻訳作業時間を半分以下に短縮。意思決定の迅速化を実現し、グローバルで知見を共有する基盤を構築しています。

主なポイント

  • 高い翻訳精度に加え、大規模運用向けのライセンス体系と国際的なセキュリティ認証

  • 用語集による誤訳防止と、ファイルレイアウトを維持したままの翻訳の実現

  • 翻訳作業時間を半分以下に削減、外部委託にかかるコストも大幅削減

  • 62カ国123拠点

  • 翻訳時間50%以上削減

  • ユーザー満足度90%以上

住友商事 ロゴ
業界
エネルギー・公益事業
DeepLのプロダクト
DeepL Translator, Glossaries, File translation
主な市場
日本, アフリカ, 中南米, アジア, ヨーロッパ
主な言語
日本語, 英語, 中国語

グローバル一体運営の実現には意思疏通の迅速化が不可欠

世界62カ国に123の拠点を展開する住友商事株式会社は、エネルギートランスフォーメーション、輸送機・建機、デジタル・AIなど、同社の強みを結集する10の「グループ」のもと、各事業領域で市場の変化や社会のニーズを先取りし、産業の枠組を超えた価値創造により、社会課題を解決することで企業価値向上を目指しています。

こうした中、グループや地域をまたいだ連携の重要性が一層高まる一方で、翻訳精度のばらつきや外部委託に伴うコスト、数日単位のタイムラグといった課題が、迅速な意思疏通の妄げとなっていました。その結果、情報共有の遅れや認識の齡齬が生じ、意思決定の遅延や機会損失のリスクが高まっていました。

このような課題認識のもと、同社は中期経営計画において「デジタルで磨き、デジタルで稼ぐ」を掲げ、デジタル・AI戦略「DAIS(ダイス)」のもと全社的なDXを推進しています。また、2025年に100%子会社化した住友商事グループの中核IT企業であるSCSK株式会社を含めグループ一体となってデジタルとAIを活用し、新たなビジネス創出と既存事業の高度化を目指しています。

同社はAIを単なる効率化の手段ではなく、競争力の源泉と位置づけています。

AIの高度な情報収集・分析能力は、意思決定の質とスピードそのものを変えつつあり、そこに人の経験や思考、暗黙知を掛け合わせることが重要であるとしています。こうした考えのもと策定された「DAIS」を中核に、同社は「デジタル・AIで稼ぐ商社」への進化を掲げています。

IT企画推進部長の三好康司氏は、次のようにDX推進の目的を説明します。

「当社のDX戦略は、大きく二つの軸で構成されています。一つは、デジタル技術やAIの活用により当社が有する事業セグメント群の競争優位性を高め、収益力を向上させること。もう一つは、経営・ビジネス基盤を高度化・効率化し、リソースをルーティン業務から付加価値の高い業務へとシフトさせること。当該二軸を実現してくことが、当社の持続的な成長には不可欠です。」

IT企画推進部長  三好康司氏

中期経営計画では、グローバルに展開する事業を一体で運営し、各事業やコーポレート機能の連携を強化していく方針が掲げられています。そうしたグローバル一体運営を実現するには、国境を越えた意思疏通と意思決定のスピードアップが不可欠でした。

「中でも言語は人と人のコミュニケーションの一丁目一番地であり、その障壁が下がることによって、事業や経営基盤におけるグローバル運営をより加速させることが可能と信じていました。」

こうした課題を背景に、「言語の壁」を打破し、グローバル一体運営を加速させるべく、同社が全社導入したのが、高精度な翻訳を実現する言語AIサービス「DeepL」でした。

圧倒的な翻訳精度と柔軟なライセンス体系が導入の決め手に

グローバルでビジネスを展開する住友商事では、コーポレートグループをはじめ、各営業グループにおいても多言語によるやり取りが頥繁に発生します。そのため、住友商事は2018年頃から翻訳ツールを全社的・継続的に導入・活用していました。

しかし、グローバルでのビジネスが複雑化するのに伴い、より精度の高い翻訳ツールへのニーズが高まってきました。IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 浅田和明氏は次のように当時の状況を振り返ります。

「コーポレート機能では、日本の本社が作成する日本語の戦略資料を、非英語圏を含めた海外拠点にも正しく理解してもらえるよう、多言語に対応した翻訳ツールが求められていました。また、各営業現場では、アフリカや中南米地域などへのビジネス拡大に伴い、現地政府やパートナーとの交渉でローカル言語の重要性も増していました。そうしたことから、コーポレートから各営業グループまで、全社的な業務を網羅する多言語翻訳ツールの導入が求められていたのです」(浅田氏)

IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 浅田和明氏

IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 上田和輝氏は、ツール自体の課題をこう振り返ります。

「従来の翻訳ツールは翻訳精度が十分とは言えず、対応言語も限られていました。また、対応可能なファイル形式が少ない点も課題でした。例えば、PDFファイルを翻訳してPDF形式のまま出力できず、ユーザーが再度変換作業を行う必要があるなど、業務の停滞を招いていました」(上田氏)

こうした翻訳精度への不安は、ダブルチェックなどの追加負担を生じさせていました。

「私が広報部に所属していた当時、Webサイトを通じてグローバルに情報発信を行う際、日本語から多言語へ翻訳した内容の正確性を判断しきれず、いったんExcelなどに転記したうえで海外拠点のメンバーにチェックや修正を依頼するなど、時間と工数のかかるプロセスが発生していました」(浅田氏)

また、多くの部署で翻訳の外部委託が常態化しており、自社で翻訳した内容をさらに外注してダブルチェックを行うケースも見られました。こうした外部依存の翻訳体制は、多額の外注費や数日単位のタイムラグを生み、ビジネス上の大きな制約となっていました。

全社課題を解決する翻訳ツールとして、DeepLを選定

こうした課題を解決するために、住友商事が導入したのがDeepLです。導入の決め手は、圧倒的な翻訳精度に加え、誰もが簡単に使えるユーザビリティ、強固なセキュリティ、そして、大規模ユーザーの利用に適合した柔軟なライセンス体系にありました。

「もともとDeepLの翻訳精度とユーザビリティの高さは認識していましたが、実導入に際しては、全社アンケートの結果も大きな後押しとなりました。調査結果から、回答者の8割以上が業務における翻訳ツールの必要性を訴え、かつ、その中で最も利用を希望するツールとして挙げられていたのがDeepLだったのです」(浅田氏)

また、セキュリティ面においても、DeepLが同社の要件を満たしていたことが採用の理由の一つでした。

「欧州拠点での展開も見据え、GDPRの対応やISO27001などの国際認証をクリアしていたこともDeepLの採用理由となりました。これらの国際標準を満たしていることは、エンタープライズ利用において必須条件であり、導入に際して安心材料になりました」(上田氏)

IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 上田和輝氏

また、エンタープライズ向けプランである「DeepL for Enterprise」の提供開始も、採用を後押しした要因の一つでした。DeepL for Enterpriseは、ユーザー数に応じた柔軟なライセンス体系に加え、シングルサインオン(SSO)による効率的なID管理を実現し、数万人規模の大規模組織での運用に対応しています。

PoCから全社展開へ、DeepL日本法人の迅速なサポートが後押し

こうした選定プロセスを経て、2025年からDeepLの全社導入プロジェクトが本格的にスタートしました。

「まず、事務局の5名ほどで約1ヶ月間にわたってPoCを実施し、ユーザーインターフェースの使い勝手と用語集機能の実務適合性を中心に検証しました。その結果、DeepLが実際のビジネス現場で十分に活用できると判断し、全社展開へと移行しました」(上田氏)

導入に際しては、DeepL日本法人による迅速かつ手厚いサポートも大きな力となりました。その一例が、セキュリティ要件を満たすためのSSO連携です。

「当社はゼロトラスト環境下でID・パスワード認証を原則禁止しており、Microsoft Entra IDとのSSO連携が求められていました。ところが、当初はMicrosoft Entra IDとのシームレスなSSO連携が実装されておらず、『ログイン工程が一つ増える』という課題が浮上しました。一時は妒協も検討しましたが、リリース当日、DeepLの日本法人と本国のエンジニアが緊密に連携し、システム改修によるSSO連携を実現してくれたのです。このようなDeepLの技術力と手厚いサポートには、驚かされました」(浅田氏)

こうして全社展開を経て、DeepLは日常業務における翻訳基盤として定着していきました。その中で、社内で活用されている他の生成AIツールとの役割分担も明確に整理されています。

「他の生成AIはチャットなどの社内コミュニケーション領域での連携に強みがありますが、PDFやPowerPointのファイルをまるごと翻訳する機能や、用語集による表記統一はDeepLが担います。社内の標準翻訳ツールとしてDeepLを位置づけています」 (上田氏)

翻訳にかかる作業時間を半分以下に削減

DeepLの導入は、住友商事に数多くのメリットをもたらしています。中でも、最大の効果は、高精度な翻訳による生産性の向上です。以前のツールでは翻訳後の手直しに膨大な時間を要していましたが、DeepLの導入によってその時間は大幅に短縮されました。

「これまでは数営業日を要していた多言語翻訳のプロセスが半分以下に短縮され、ネイティブチェックの負担も大幅に軽減されています。また、PDFやPowerPointのレイアウトを維持したまま丸ごと翻訳できる機能も、業務プロセスの効率化に貢献しています」(浅田氏)

事実、以前は外部へ翻訳を依頼したりダブルチェックを委託したりしていたプロセスは大きく様変わりしています。

現在は、まず社内でDeepLと用語集を用いて精度の高い下訳を作成し、対外的に発信する正式な文書などの最終的な正確性を期するためのチェックのみを外注するという体制に移行しました。外部委託への依存度とコストは大幅に削減でき、語学に堤能な社員への業務集中も解消されました」(上田氏)

こうした翻訳コストや工数の大幅な削減に加え、作業時間の短縮によって生まれた時間は他の業務に充てられ、組織全体の生産性向上にもつながっています。これは、デジタル・AIの活用により業務を効率化し、創出された時間をより付加価値の高い業務へ充てるというDX戦略が、翻訳領域においても具体的に実現されていることを示しています。

そうした翻訳業務の精度向上においては、DeepLの用語集機能が重要な役割を果たしています。IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 水本彩也香氏は、その活用例について次のように説明します。

「全社共通の用語集には、社是や経営理念、部署名、社名の正式な英語表記などを登録し、対外的な発信における表記の揺れを排除しています。一方で、各部署や営業現場特有の専門用語については、現場が主体となって登録を行う仕組みを整えています。こうした業界ならではの訳語を登録することで、誤訳による手直しにかかる時間を削減できています。また、誤訳の発生はビジネスに損失をもたらしかねませんが、用語集機能によりそうした誤訳によるリスクの発生を未然に防げています」(水本氏)

さらに、DeepLの活用はビジネスの最前線における意思決定の迅速化にとどまらず、その質の向上にも寄与しています。グローバルに展開する同社においては、各拠点が持つ情報や知見をいかに迅速かつ正確に取り込み、全体の戦略に反映させるかが重要な課題となっています。

「例えば、各国政府から現地語で出される入札等の情報を即座に理解することは、商機を逸しないために不可欠です。DeepLを活用することで現地の情報を正確かつ迅速に入手し、戦略を立てることが可能になりました」(浅田氏)

IT企画推進部 インフラシステム第二チーム 水本彩也香氏

グローバルでのナレッジの共有・活用を実現するプラットフォームへ

いまや住友商事においてDeepLは業務に欠かせないツールとなっており、運用開始後に行った全社アンケートの結果でも、9割以上のユーザーが満足しているとの回答が寄せられました。

「アンケートの中には『DeepLが無くなってしまったら、仕事ができなくなってしまう』といったコメントも寄せられました。高い翻訳精度に加え、DeepLの直感的な操作性が全社規模でのスムーズな定着につながったと考えています。実際、全社展開前に4回ほどユーザー向けの説明会を行ったのですが、操作方法に関する質問は全く寄せられませんでした」(水本氏)

今後は、DeepLの活用範囲をさらに広げ、グローバルに展開する約900の事業会社においても言語のハードルを下げる取り組みを検討しています。加えて、グローバルでナレッジを共有・活用するプラットフォームとしても、DeepLを活用していきたい考えです。

「例えば、日本語で作成した有益な資料も、そのまま発信するだけでは海外の社員には届きません。逆もしかりです。翻訳はあくまで手段であり、目的ではありません。しかし、そのハードルを極限まで下げていくことは、情報流通を活性化し、ナレッジを共有する上で極めて重要です。今後、DeepLの活用範囲を広げ、総合商社の持つナレッジを、言語の壁を越えて共有・活用できるプラットフォームを作り上げていきたいと考えています」(浅田氏)

言語の壁を越え、世界中の拠点が知見を共有しながら一体となって動く。住友商事は、DeepLを活用してその実現に着実に近づいています。総合商社がグローバルに蓄積してきたナレッジは、言語を超えてこそ真の価値を発揮します。